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キシリトールの予防効果についてのお話

こんにちは、あきる歯科院長の濱窪です。

歯科ではよく予防として使われているキシリトール、予防先進国の北欧諸国で使われていたこともあ り、あっという間に歯科のみならずコンビニのガムコーナーまでを占拠するに至りました。人によってはキシリトールを食べてるから歯磨きしなくても大丈夫な んて方までいらっしゃいます。

しかし、先日このようなニュースが発信されました。

『国際NPO「コクラン共同計画」の研究グループは、これまでに発表された研究結果をまとめて評価したところ、「キシリトールの虫歯予防効果を示す明らかなエビデンス(根拠となる研究結果)はなかった」と、3月26日発行の同団体機関誌「コクラン・ライブラリー」(2015; 3: CD010743)に発表した。(中略)評価の結果、キシリトールを含む製品(歯磨粉、ガム、シロップ、菓子、歯磨きシートなど)の虫歯予防効果は、乳児と大人に対してはエビデンスが示されなかった

キシリトールには予防作用はないのでしょうか?
歯科界でも諸説出ていますし、エビデンスに乏しいとされている部分もあります。

ここで基本的な虫歯とキシリトールについてのおさらいをしておきます。
よくうたわれているキシリトールと虫歯に関する内容ですが、
①虫歯菌はスクロース(砂糖)を利用して虫歯を発生させます。
②キシリトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコールは代用甘味料とも呼ばれ、虫歯菌の餌にならないため、
 甘い味はするが虫歯にはならない
③キシリトールの甘味による唾液の分泌、特にガムの場合は咀嚼による唾液の分泌があるため唾液により酸の中和と再石灰化の促進が促される
④キシリトールの非感受性の菌は不溶性グルカンの合成、酸産性能が低い(虫歯菌が歯にくっつきにくく、歯を溶かす能力が下がる)

虫歯菌はキシリトールを代謝しにくく、キシリトールを取り込んだ虫歯菌は他の糖も代謝を阻害されるため次第に減少していく
⑥キシリトールの摂取は一日3回から5回、含有量は50%以上が推奨

①②③ については問題ありません。代用甘味料を使えば虫歯になりにくいですし、唾液の分泌が促進されれば虫歯になりにくく、再石灰化の促進も見込めます。唾液に よる再石灰化は日常頻繁に起こっておりますし、シェーグレン症候群などで唾液が減少した方は虫歯のリスクが上がります。しかし、ここまでの部分では、キシ リトールでなくても代用甘味料の使用で虫歯の予防効果が見込めるということでしかありません。実際、キシリトール、ソルビトール、マルチトールの酸産性能は変わらないとする報告があります。また、実質的にすべてを代用甘味料で賄うというのは不可能に近い話ですので、代用甘味料をおやつなどに使えば虫歯のリスクが減るという程度の内容になります。

問題は④⑤についてです、④についてはキシリトールが影響を及ぼさない菌は毒性が低いといった内容になりますので⑤の内容が担保されなくては意味がありません。肝心の⑤ですが、
キ シリトールにより阻害される虫が菌がいるのは事実ですが、阻害されない虫歯菌もいること、キシリトールを食べ続けることで阻害されない虫歯菌が増えていく ことも報告されています。ただし、砂糖の摂取により口腔内が頻繁に酸性に傾くことがないよう環境であれば、酸性環境下に強い虫歯菌よりもほかの菌が優勢に なりますので結果的に虫歯菌の減少は起こるようです。また、キシリトールは他の代用甘味料と比べて制菌作用があるという報告もあり、良好な結果が出ているケースもありますがこの部分に関しては確実とは言えないようです。

⑥については上記の内容とはやや別枠になりますが、100%キシリトールの製品でな い場合、商業的にキシリトールと銘打ちたいために砂糖とキシリトールが両方含まれている製品があります。キシリトールが虫歯をつくらなくても、砂糖の方が 虫歯を作ってしまいますので虫歯の予防の観点からは全く意味がないのですが、商品としては販売されています。また、予防効果がうたわれているため、10% 程度のキシリトール含有食品もありますので、残りの成分が何であるかに注目する必要があります。

ここまでをまとめると、
〇キシリトールの使用により砂糖の摂取頻度を減らすことが可能であり、口腔内が酸性になりにくい環境をつくれば虫歯の予防自体は見込める。その製品が唾液の分泌を促すものであればさらにいい。
〇他の代用甘味料と比較して、同量で砂糖と同程度の甘味を感じるキシリトールは間食としての汎用性が高い。
〇「虫歯予防のキシリトール」の商業的成功により、キャンディー、チョコ、ガムなど様々な形態のキシリトール100%製品が生産されているため他の代用甘味料使用のものよりバリエーションがあり、手に入りやすい。
〇上記のキシリトールの効果を考えた場合、砂糖入りのキシリトール食品や、歯磨きの代わりにキシリトールガム、ケーキを食べた後にキシリトールで予防などは効果がない。(唾液分泌による中和という効果はあるかもしれないが予防は難しい)
〇キシリトール自体が他の代用甘味料と比較して効果があるとする報告もあるが、それ自体で予防ができるほど劇的な効果はない。
ということになりそうです。

備考として、糖 アルコール以外の単糖類(グルコ-ス、フルクト-スなど)、二糖類(スクロ-ス、麦芽糖、乳糖など)の含有量が0.5%以下のものに、シュガーレス、ノン シュガー、シュガーフリーと表示されていますが、これらはカロリーが低いわけでも、酸を産生しないわけでもありません。あくまで砂糖よりはましといった程 度で、虫歯になる可能性はあります。

一 応一言触れておきたいのは、このコクラン共同計画の評価は、1991~2014の間に発表された人を対象としたキシリトールの虫歯予防効果に関する論文対 して、「エビデンスの質が低い」という判断を下しているということで、キシリトールに効果がない事が証明されたわけではありません。WHOのスタンスでも キシリトールについては虫歯予防効果はpossibleであり、確実ではないがおそらく予防効果があるというスタンスです。これは、人を対象とした場合、 特に対象人数が少ない場合、キシリトールのために予防ができたのか、歯磨きのために予防ができたのか、もともと菌が少ない方だったのか、逆に虫歯になった 場合に、キシリトールに効果がなかったのか、食生活に問題があったのか、歯磨きが不十分だったのかが判断しにくいという理由から、対人研究の精度が下がる ためです。研究の基本は同一素材の対象に違う条件で比較することですが、対人試験の場合まずこの同一条件を満たすことが難しいからです。

というわけで、キシリトールを使用する場合は、
三食以外で間食をする場合に甘 いものがほしい場合、眠気覚ましや口さびしい方等ガムをかむ頻度が高い場合などにキシリトール100%か、キシリトールと他の代用甘味料のみで甘味を構成 している製品を使うことをおすすめします。こういった場合にはキシリトールを使用する意味(虫歯の予防効果)がありますし、虫歯の繁殖期の入り口となる4~7歳くらいのお子さんが甘いものが好きで頻 繁に食べたがる場合などはお勧めできます。ただしキシリトールの大量摂取はおなかが緩くなりますのでその点は注意が必要です。
 キシリトールは別に悪いものではありませんので、いい付き合い方を考えてみてください。

長くなりましたが、調べてみてキシリトール100%製品の現在のバリエーションの豊富さには驚くばかりでした。




思わず取り寄せてしまった、キシリトール100%グミ、サイダー、スルメ!
スルメまであるとは・・・。



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マタニティ歯科 マイナス1歳からの歯医者って?

こんんちは、あきる歯科院長の濱窪です。

近年歯科以外の分野でもでもマタニティ歯科やマイナス一歳からの歯医者という言葉を聞くことが多くなってきました。

そこで、マタニティ歯科についてお話ししようとお思います。

以前にこのブログで触れましたが、妊婦さんの歯科治療に関しては、

まず、妊娠中はホルモンのバランスが崩れて歯周炎を起こしやすくなります。
また、つわりで奥歯まで歯ブラシが入れられない。気持ち悪くて歯磨きに手が回らないなど、
汚れが残りやすい環境になりやすいです。そこで、

1.つわりなどで虫歯や歯周病が進行しやすくなるため安定期の5~9ヶ月で検診にいきましょう。
  赤ちゃんにカルシウムを取られて歯がもろくなるという通説は間違いですが、
  つわりでは磨きができないなどが理由でこの時期に状態が悪くなるため、そのように言われていました。

2.歯周病が早産や低体重児のリスクを2倍から4倍に高めることは報告があり、歯周病菌が血中に入り
 子宮の収縮を起こすことから起こると言われています。安定期に歯科医院での歯のクリーニングをしていきましょう。

3.お薬に関しては、できるだけ使わないに越したことはないですが、歯の痛みや炎症により
 子宮の収縮や、血管への炎症性細胞の侵入が起こるとそちらの方が母胎に悪影響のため、
 急性の炎症などがあれば、ご本人と相談の上、胎児に影響のない薬剤を選んで投薬を行うことがあります。

4.レントゲンはターゲットが顔面で体には鉛のエプロンを掛けるため胎児の被曝はほぼ無し。
 頭部に関しても東京鹿児島間の飛行機に乗る方が被曝量は多くなります。

5.痲酔に関しては無痛分娩でも使用するものなので胎児に悪影響はないですが、痲酔に対する緊張や
 注射の痛みのストレスの方がよくないのでできるだけ使用を避けます。しかし、3と同じで痲酔をしない
 ストレスの方が悪影響の場合は同意を得て使用する可能性はあります。

この5点が妊娠中の歯科治療に関する注意事項になります。
胎児への歯科的影響についてはまた次回。









仮歯でおわりにしていいですか?

こんにちは、あきる歯科院長の濱窪です。

歯科医院では最終的なかぶせものの前に仮の歯を作り、見た目に困らないようにしたり、かみ合わせや形態の確認を行うことがあります。歯の色が気になって治療を行った場合など仮歯になるだけで見た目が改善するので非常に喜ばれます。

しかし、ここで来院が途絶える患者さんがたまにおられます。

仮歯のまま使っていくとどうなるでしょうか?

仮歯は材料が柔らかく、目に見えない空洞がたくさんあります。
そのため、長く使うと割れたりすり減ったりしてしまうことや、仮付けの接着剤が剥がれた部分に汚れが入り虫歯になることがあります。どんなにきれいに見えようと、表面が荒く、空洞があるため汚れがつきやすく、細菌の繁殖を起こし歯茎の炎症や悪臭の元になります。

1~2ヶ月程度であればいいですが、長期にわたって放置をすると大変なことになりますのでご注意ください。

お子さんの治療に関して いつから治療をするのか

こんにちは、あきる野市、あきる歯科院長の濱窪です。


お子さんの治療に関していつから治療を始められるのか質問されることがあります。

小児の虫歯は、哺乳瓶でジュースなどを飲んでそのまま寝てしまうなどの生活が続いて、低年齢で広範囲な虫歯ができる、
いわゆる哺乳瓶う蝕にならなければ、3歳半から4歳くらいで奥歯の間で虫歯ができる場合がほとんどです。

しかし、お子さんによっては治療が怖いくて体が動いてしまい、治療が困難な場合があります。
治療ができる子は3歳からでも治療が可能ですが、難しい子は小学校2年生くらいまで積極的な治療が難しいこともあります。

これは、1つは一度歯医者で痛い思いをしたため怖くなっているためであったり、また、その子の性格で怖がりな場合もあります。
なので、積極的に治療を行うのは早くても3歳半、遅い場合は7歳くらいからが目安になります。

しかし、歯の治療は大人でも子供でも治したところが永遠に持つわけではありません。とくに唾液が多く、お口が小さいお子さんの場合、治療が確実にできない場合もあります。そこで、当院では、低年齢の場合は積極的な治療を避け、できるだけ歯を削るのを先延ばしにすることを推奨しています。フッ素や、虫歯の進行を抑制する効果のあるアイオノマーセメントを使用して、汚れのたまりやすい穴をふさいでしまうことや、フッ素うがいやキシリトールの使用、シュガーコントロールなどで虫歯のリスクを下げ、生え変わるまで症状が出ない状態をできるだけ維持して、積極的な治療を始めるのを先延ばしにするようにしています。





歯磨き粉の選び方

こんにちは、あきる歯科院長の濱窪です。

 時々きかれる歯磨き粉のはなにがいいの?ですが、今日は歯磨き粉の成分についてお話しします。
 歯の表面について酸や毒素を出す歯垢(バイオフィルム)は、お風呂や流しのぬめりと同じで物理的にこすらないと落とすことができず、薬剤成分よりも歯ブラシやフロス、歯間ブラシでどれくらい物理的に汚れを落とせるかが大事なのですが、こすり落とした細菌を殺菌する成分や、ある程度バイオフィルムに浸透する薬剤なども現在ははいって来ています。

 最近の歯磨き粉は複合的に予防できるようにいろいろな成分が全部のせで入っていることが多いいいんですが、特に気にした方がいい成分について。

「フッ素」  虫歯予防成分といえばこれ、国内の歯磨き粉の95%くらいには入っています       が、2017年3月からフッ素の含有量基準値が海外に合わせて日本でも上がって       いるので1450ppmの濃度(2017年以前は950ppmが最高値)ものが予防効果       が高いです。

「CPC」  最近の歯磨き粉に入っていることが多い塩化セチルピリジニウム。口腔内の       浮遊性細菌に対して強力な殺菌作用をもち、歯磨きで落とした汚れの殺菌作       用があります。陽イオン性のためバイオフィルム表層の細菌に付着して持続       的に殺菌効果を示します。

「IPMP」 CPCと並んで細菌の歯磨き粉の成分として人気のイソプロピルメチルフェ       ノール。細菌の産生を行うバイオフィルムは薬剤の浸透を妨げる働きがある       が、IPMPはバイオフィルム内部に浸透して強い殺菌効果を発揮します。

「グリチルリチン酸ジカリウム」 
「トラネキサム酸」       抗炎症作用により歯肉の炎症を抑えます。

「TCP」   リン酸三カルシウムが酸で溶けた歯のリン酸やカルシウム分を補充します 

「硝酸カリウム」 知覚過敏症状を抑制します。

歯周病の予防をしたいか、虫歯を予防したいか、知覚過敏を気にするかで変わりますが、
虫歯予防ならフッ素濃度1450ppmの歯磨き粉。歯周病予防ならCPC、IPMP、トラネキサム酸かグリチルリチン酸ジカリウムが入ったものを選ぶといいでしょう。
具体的には、虫歯予防であればライオンが出しているチェックアップスタンダード、歯周病予防であればSP-Tジェルなどがおすすめです。全部気になる方は歯科医院で3Mのクリンプロ歯磨きペーストなどがおいてあれば、上記のほとんどの成分が入った歯磨き粉になります。


ただし、歯磨き粉はあくまで補助で、歯ブラシやフロス、歯間ブラシでどれくらい物理的に汚れを落とせるかが肝ということは、覚えておいてください。

矯正治療の開始時期

 こんにちは、あきる歯科院長の濱窪です。

 今日はよく聞かれる質問の一つ、「矯正はいつから始めればいいの?」についてお話しします。

 矯正の開始時期は、7~9歳くらいの永久歯が生え始めて時期が一つ、永久歯が全部はえてきてからの成人矯正の時期がもう一つの目安になります。

 ここで注意が必要なのはいわゆる成人矯正は、大人になってからの矯正ではなく、歯が全て永久歯に生えかわってきてからの永久歯の矯正のことを呼んでいます。成人になってから使う永久歯の歯並びの治療という意味です。 大体13歳以降に行う矯正は、ですから成人矯正(2期治療)になります。

 小児矯正(1期治療)とよばれる矯正の開始時期は、永久歯が生えてきて前歯が上下4本並んでくる時期(7歳半~9歳)が開始の目安になります。
 前歯は永久歯の方が大きいため乱れやすく、奥歯は永久歯の方が小さいので並びやすいため、前歯がそろっていて残っている乳歯に欠損や虫歯でよる歯の欠けが無ければ、奥歯は自然に生え替わることが多いため、1期治療は前歯の並ぶスペースを作ることを目的にします。

 この時期に矯正をするメリットは、歯並びがよくなることで見た目が早くよくなること、虫歯や歯周病のリスクが少なくなること、最大の違いは顎のスペースを成長期に合わせて拡大することで、抜歯をしないで矯正をすることが可能になることです。(抜歯が必要になることもありますが、成人矯正から始める場合と比較すれば歯を抜く可能性は大きく減少します)

 反対に、この時期にあえて始める必要が無い場合ですが、本人が気にしていないわずかな(1~2mm程度の)歯の重なりや、位置のずれであれば成人になるまでの虫歯や歯周病リスクも比較的低く、成人になってからでも抜歯をせずに矯正をすることが可能です。

 歯の状態によって矯正を始める時期は異なりますので詳しくは担当医にご相談ください。

△土曜日の午後はPM6時まで診療
日曜/祝日は休診
木曜日午後は矯正のみの診療になります。一般歯科の診療は行っておりませんのでご注意ください

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