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あきる歯科ブログ 歯科治療: 2015年11月

キシリトールの予防効果についてのお話

こんにちは、あきる歯科院長の濱窪です。

歯科ではよく予防として使われているキシリトール、予防先進国の北欧諸国で使われていたこともあ り、あっという間に歯科のみならずコンビニのガムコーナーまでを占拠するに至りました。人によってはキシリトールを食べてるから歯磨きしなくても大丈夫な んて方までいらっしゃいます。

しかし、先日このようなニュースが発信されました。

『国際NPO「コクラン共同計画」の研究グループは、これまでに発表された研究結果をまとめて評価したところ、「キシリトールの虫歯予防効果を示す明らかなエビデンス(根拠となる研究結果)はなかった」と、3月26日発行の同団体機関誌「コクラン・ライブラリー」(2015; 3: CD010743)に発表した。(中略)評価の結果、キシリトールを含む製品(歯磨粉、ガム、シロップ、菓子、歯磨きシートなど)の虫歯予防効果は、乳児と大人に対してはエビデンスが示されなかった

キシリトールには予防作用はないのでしょうか?
歯科界でも諸説出ていますし、エビデンスに乏しいとされている部分もあります。

ここで基本的な虫歯とキシリトールについてのおさらいをしておきます。
よくうたわれているキシリトールと虫歯に関する内容ですが、
①虫歯菌はスクロース(砂糖)を利用して虫歯を発生させます。
②キシリトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコールは代用甘味料とも呼ばれ、虫歯菌の餌にならないため、
 甘い味はするが虫歯にはならない
③キシリトールの甘味による唾液の分泌、特にガムの場合は咀嚼による唾液の分泌があるため唾液により酸の中和と再石灰化の促進が促される
④キシリトールの非感受性の菌は不溶性グルカンの合成、酸産性能が低い(虫歯菌が歯にくっつきにくく、歯を溶かす能力が下がる)

虫歯菌はキシリトールを代謝しにくく、キシリトールを取り込んだ虫歯菌は他の糖も代謝を阻害されるため次第に減少していく
⑥キシリトールの摂取は一日3回から5回、含有量は50%以上が推奨

①②③ については問題ありません。代用甘味料を使えば虫歯になりにくいですし、唾液の分泌が促進されれば虫歯になりにくく、再石灰化の促進も見込めます。唾液に よる再石灰化は日常頻繁に起こっておりますし、シェーグレン症候群などで唾液が減少した方は虫歯のリスクが上がります。しかし、ここまでの部分では、キシ リトールでなくても代用甘味料の使用で虫歯の予防効果が見込めるということでしかありません。実際、キシリトール、ソルビトール、マルチトールの酸産性能は変わらないとする報告があります。また、実質的にすべてを代用甘味料で賄うというのは不可能に近い話ですので、代用甘味料をおやつなどに使えば虫歯のリスクが減るという程度の内容になります。

問題は④⑤についてです、④についてはキシリトールが影響を及ぼさない菌は毒性が低いといった内容になりますので⑤の内容が担保されなくては意味がありません。肝心の⑤ですが、
キ シリトールにより阻害される虫が菌がいるのは事実ですが、阻害されない虫歯菌もいること、キシリトールを食べ続けることで阻害されない虫歯菌が増えていく ことも報告されています。ただし、砂糖の摂取により口腔内が頻繁に酸性に傾くことがないよう環境であれば、酸性環境下に強い虫歯菌よりもほかの菌が優勢に なりますので結果的に虫歯菌の減少は起こるようです。また、キシリトールは他の代用甘味料と比べて制菌作用があるという報告もあり、良好な結果が出ているケースもありますがこの部分に関しては確実とは言えないようです。

⑥については上記の内容とはやや別枠になりますが、100%キシリトールの製品でな い場合、商業的にキシリトールと銘打ちたいために砂糖とキシリトールが両方含まれている製品があります。キシリトールが虫歯をつくらなくても、砂糖の方が 虫歯を作ってしまいますので虫歯の予防の観点からは全く意味がないのですが、商品としては販売されています。また、予防効果がうたわれているため、10% 程度のキシリトール含有食品もありますので、残りの成分が何であるかに注目する必要があります。

ここまでをまとめると、
〇キシリトールの使用により砂糖の摂取頻度を減らすことが可能であり、口腔内が酸性になりにくい環境をつくれば虫歯の予防自体は見込める。その製品が唾液の分泌を促すものであればさらにいい。
〇他の代用甘味料と比較して、同量で砂糖と同程度の甘味を感じるキシリトールは間食としての汎用性が高い。
〇「虫歯予防のキシリトール」の商業的成功により、キャンディー、チョコ、ガムなど様々な形態のキシリトール100%製品が生産されているため他の代用甘味料使用のものよりバリエーションがあり、手に入りやすい。
〇上記のキシリトールの効果を考えた場合、砂糖入りのキシリトール食品や、歯磨きの代わりにキシリトールガム、ケーキを食べた後にキシリトールで予防などは効果がない。(唾液分泌による中和という効果はあるかもしれないが予防は難しい)
〇キシリトール自体が他の代用甘味料と比較して効果があるとする報告もあるが、それ自体で予防ができるほど劇的な効果はない。
ということになりそうです。

備考として、糖 アルコール以外の単糖類(グルコ-ス、フルクト-スなど)、二糖類(スクロ-ス、麦芽糖、乳糖など)の含有量が0.5%以下のものに、シュガーレス、ノン シュガー、シュガーフリーと表示されていますが、これらはカロリーが低いわけでも、酸を産生しないわけでもありません。あくまで砂糖よりはましといった程 度で、虫歯になる可能性はあります。

一 応一言触れておきたいのは、このコクラン共同計画の評価は、1991~2014の間に発表された人を対象としたキシリトールの虫歯予防効果に関する論文対 して、「エビデンスの質が低い」という判断を下しているということで、キシリトールに効果がない事が証明されたわけではありません。WHOのスタンスでも キシリトールについては虫歯予防効果はpossibleであり、確実ではないがおそらく予防効果があるというスタンスです。これは、人を対象とした場合、 特に対象人数が少ない場合、キシリトールのために予防ができたのか、歯磨きのために予防ができたのか、もともと菌が少ない方だったのか、逆に虫歯になった 場合に、キシリトールに効果がなかったのか、食生活に問題があったのか、歯磨きが不十分だったのかが判断しにくいという理由から、対人研究の精度が下がる ためです。研究の基本は同一素材の対象に違う条件で比較することですが、対人試験の場合まずこの同一条件を満たすことが難しいからです。

というわけで、キシリトールを使用する場合は、
三食以外で間食をする場合に甘 いものがほしい場合、眠気覚ましや口さびしい方等ガムをかむ頻度が高い場合などにキシリトール100%か、キシリトールと他の代用甘味料のみで甘味を構成 している製品を使うことをおすすめします。こういった場合にはキシリトールを使用する意味(虫歯の予防効果)がありますし、虫歯の繁殖期の入り口となる4~7歳くらいのお子さんが甘いものが好きで頻 繁に食べたがる場合などはお勧めできます。ただしキシリトールの大量摂取はおなかが緩くなりますのでその点は注意が必要です。
 キシリトールは別に悪いものではありませんので、いい付き合い方を考えてみてください。

長くなりましたが、調べてみてキシリトール100%製品の現在のバリエーションの豊富さには驚くばかりでした。




思わず取り寄せてしまった、キシリトール100%グミ、サイダー、スルメ!
スルメまであるとは・・・。



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